近年、1年に3回放送されるSherlockというドラマに影響を受けて、シャーロックホームズシリーズを読んでみることにした。昨年放送された『あの女 (The Woman)』という回はなかなかおもしろく、インターネットで調べると『ボヘミアの醜聞(しゅうぶん)』がモデルになっていると書かれていた。そこで今回は『ボヘミアの醜聞』が収録されている『シャーロックホームズの冒険』という短編集を選んだ。シャーロックホームズ自体はとても有名だし、小中学校の図書館にも1冊は必ず置いてある本なので名前は知っていた。だが、古い本は字が小さく、表記も難しいので、あえて改定版をということで新品で買ってみた。

この本は1篇30ページから50ページ程度の完全な短編集だ。ワトソン博士もすでに結婚している設定になっており、名コンビの事件解決アドベンチャーもかなり先に進んでいる。私の読みたかったボヘミアの醜聞は、ボヘミア国王が元交際相手に、写真をネタに脅迫されているという話だった。ドラマ・シャーロックでは脅迫されているのはイギリス王室のある高貴な方という設定だったが、基本的には同じだ。ただ、ドラマの話のようにアイリーン・アドラーはアブノーマルな女性というわけではなく、小説のほうは魅力的な女性というだけにとどめてある。『あの女』ではかなり凝(こ)った話の展開だったけれど、小説では結構あっさり話が終わってしまう。もっとアブノーマルな原作なのかと期待したが、ちょっと期待外れだった。

この本に収録されている赤毛組合も、とても有名な話だ。この話はアニメ・名探偵コナンにも引用されていたり、バラエティー番組で出てくるクイズのネタなんかにも使われたことがある。質屋の主人に簡単な仕事を与え店を留守にさせ、その間にその店から銀行の地下金庫まで地下道を作り、強盗を企てるという話だ。これもあまりにも有名なので、新鮮さに欠ける感がある。元ネタはシャーロックホームズだといっても、テレビやアニメがそこら中で使い回すネタなので、「あ、これ、知っている。」となってしまうのだ。でも、一応原作を読めたということに意義を見い出したい。

おもしろいと思ったのは、唇(くちびる)の捩(ね)じれた男や椈(ぶな)屋敷だ。結末はよくある展開だけれど、ストーリーがおもしろかった。ホームレスの成功者の話や、家庭教師に雇われた女性がおてんばをする話というのは、どことなくアドベンチャーのようで読んでいてワクワクした。しかし、こうやって感想を書くと、やっぱり「あれ、この話よくあるよな。」って気付くところはあるのだけれど。現代でも成功した人が元ホームレスでしたみたいなネタはあるし、女性家庭教師がおてんばして事件解決って「家政婦は見た」じゃないのかという気がしなくもない。それほどにシャーロックホームズの話は、現代作家に広く影響を与えているということだろう。

言葉づかいがかなり古臭く音読するのもちょっと難があったが、字も大きいし、難しい言葉には必ずルビが振ってあるので、読みにくいということはない。古本ではなく、改訂版を選んだということが功を奏した形だった。軽快な文体にテンポの良い物語展開なので、恐らく誰でも楽しめるだろう。久しぶりにいい本に出会った。でも、やっぱりちょっと新鮮さには欠けたが。


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