これはトムソーヤーが無人島で海賊ごっこをしたり、洞窟で迷子になったり、盗賊団が隠した財宝を見つけて大金持ちになったりする話です。『ニューホライズン』の中学英語教科書でも掲載されており、誰もが一度は触れることのある最も有名なアメリカ文学の一つでしょう。原書は英語で書かれています。この本の難しさは、やはりなんといっても口語体にあると思います。例えばKnow(知る)の過去形はKnewですが、口語体ではKnowedとなっています。ところどころに見られる'emという省略体やSupposeをS'poseとしてあるところなど、慣れるまでに結構時間がかかります。黙読では分からないまま読み飛ばしてしまうかもしれませんが、音読するとこういう口語体の読み方に苦戦しました。

しかし、それでもこのトムソーヤーの冒険は、話が単調になるということがまったくなく、常に新しいサプライズが起こります。この本ではトムが必ず英雄になるというスタンスでいくつもの冒険がセッティングされていますので、誰でも経験のある失敗に苦笑するような苦いシーンがまったくありません。話を深めていけば恥ずかしくなるようなシーンでも、英雄トムを生む冒険というスタンスで書かれているので、一つの冒険を読み終える頃には「トム、すげー!」と思ってしまう。そういう本です。

原書を読み終えた感想として、口語体の難しさは先に書きましたが、やっぱり単語でもちょっと難しい単語が登場します。これはクリスマス・キャロルのように難しいけどフォーマルな単語の連続というより、子どもの冒険談に登場する独特の単語の難しさと言ったほうがいいかもしれません。しかし、それほど数は多くないので、半分以上読み進められれば、後半は新出単語に悩まされることもなくなるでしょう。冒険談のほうも、前半90~100ページ、トムが無人島へ出かけるまでは、それほどワクワクするようなシーンもありません。ここを経てトムが本格的に冒険を開始してからが、この本の本番です。

前半が長らく平凡な上に、やはり口語が多くて話がつかみにくく、ここで挫折してはもったいないと思います。原書にチャレンジする時は、よほど英語に自信がない限り、『トム・ソーヤーの冒険―トウェイン完訳コレクション』を読んだあとに挑戦したほうがいいと思います。

『The Adventures of Tom Sawyer』はアメリカ児童文学の易しい本として紹介されていますが、それはあくまでも英語が母語の人々にとっての話です。非英語圏の人が読む場合は、それなりにレベルの必要な一冊だと思います。オーディオブック、日本語訳、そして原書をそろえて、ぜひ皆さまもトムソーヤーの世界を堪能してください。


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