臆病者のための株入門 ★★☆☆☆

投資
この本はディーラーとして一攫千金を狙うことをあきらめた男の追想録である。近年の株式投資ブームをホリエモンやジェイコム男の例を出しての解説から始まり、証券会社のすすめる資産運用が合理的な経済感覚から考えるといかに割高かを解説する。後半では、どのような投資手法が利益をあげる確率が高いかを著名な投資家を例にあげながら解説する。

日本経済の先の見えない停滞から、国内株に対象をしぼった投資はもはや勝算が低い。初心者向けに推奨される中長期投資も、日本国内の長引く不況の中においては必勝法とは言えないのである。そういうことを実際の数値を用いて具体的に解説している。

では、どうすれば利益をあげられるのか。筆者は海外相場も広く投資対象にし、世界市場ポートフォリオを組むことだと結論づける。

テクニカル分析もファンダメンタルズ分析も損失を被るリスクは避けられない。デイトレードを含む短期投資も、証券マンがすすめる中長期投資も、ここ数十年の日本経済の歴史から考えれば損をする。

企業年金で採用されている確定拠出年金(日本版401k)は実は非常にリスキーな資産運用型の年金であるし、金融業界が啓蒙する資産運用は厳密にコストを計算するとぼったくりと言える。

最近はやりの金融ブームにことごとく反論し、流行に踊らされてはいけないと警鐘を鳴らしているところにこの本の意義がある。

筆者はITバブルの時期に投資に関心を持ち、非常に勤勉に取り組んだが、現在はライターとして投資の世界から距離をおいている人である。この点で、一攫千金を夢みて投資の世界に入り込んだが、現在は相場師を引退し、一攫千金をあきらめてしまった人の書いた本といえる。

私が印象に残った点を3つほどあげてみたい。一つは、金融商品としてすすめられている国債や保険、年金、金投資なども決して割の良い資産運用──もうけ話──ではないと解説しているところだ。

金融商品には必ず手数料がかかってくるし、海外預金には為替差損(差益)がからんでくる。そういうコストを厳密に計算していくと確実にもうけるのは金融商品を売っている証券会社や銀行などであり、それを購入する側は割高な費用を支払い、わずかな利益しかあげられないようにできている。これが一番衝撃的なことだった。

先日読んだ『図解わかる資産運用』には、さまざまな運用方法が紹介されており、金融商品を購入することが賢いお金の増やし方のように書かれていたので、それらに反駁するこの本はそれだけで非常に意義のあるものだと思う。

二つ目は、世界金融の中心アメリカで巨万の富を築いた相場師や投資会社経営者の話だ。証券アナリストのすすめるままに投資をすると確実に損をするといったような話や、バフェットのような株式投資で巨万の富を築いた人の話は、そこに夢があるから読んでいておもしろい。

証券アナリストは予想を売るのが商売で、株でもうけることが商売ではない。アメリカにはアナリストの予想を検証する学者がいて、その結果、アナリストの予想通りに投資すると損をするということがあばかれている。金融業界の人間は金融商品という確実にもうかる商品を売ることが仕事で、株で一攫千金などというリスクを取ろうとは考えない。

その一方でバフェットのように確実に利益を上げている投資家もいる。非常に厳密な企業分析と長期投資で株式投資というリスキーな世界でも確実に利益をあげている男の話は興味深かった。

だが、筆者はバフェット流投資を実践するのも良いが、バフェットに資産をあずけたほうが確実だと逃げるところはいただけなかった。この本は株式投資がギャンブルだという認識で書かれているので、勝負という危険な橋を渡らず、より低いリスクで確実にもうけられる資産運用はないかと模索している。最後までこのスタンスが貫かれているので、この本に人生逆転とか、一攫千金という話は期待しないほうが良い。

三つ目は、世界市場ポートフォリオという提案だ。提案というのは筆者が実践していない点からくる。

この提案は、経済は自己増殖するシステムだという資本主義の基本概念にのっとって考え出された必勝案だ。日本、アメリカ、ヨーロッパ、BRICsなど、主要国の株をまんべんなく購入する分散投資で、一カ所で損失が出ても、ほかでおぎない、トータルで利益を出そうというポートフォリオだ。

これは現代において非常に合理的なポートフォリオだが、経済のグローバル化という点で、世界経済が一気に縮小するリスクというのも存在する点が一抹の不安を残す。そして、このポートフォリオを組むには莫大な資金が必要なこと。もっとも合理的なポートフォリオはコストもかかる。

読了した感想としては、やっぱり『臆病者のための株入門』だなという感じだった。一線を退いて、昔つちかった知識をもとに書かれているので、投資の本としては決して読み味のよいものではない。

この人は相場師ではなく、ライターなのだ。リスクを取らなくても満足できる安定した生活があるのだ。それはそれで結構なことだ。リスクを取らなくても良い人生というのはうらやましい。

だが、私のようにリスクを取らなければ現状が改善しない人間には、この人の話は参考程度にしかならなかった。


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