戦争論 (まんがで読破 91) ★★★★☆

書評
この本は、前半を使ってクラウゼヴィッツの戦争論と戦争の近代史を解説し、後半はクラウゼヴィッツ以降の戦争、つまり戦争の現代史を解説しています。クラウゼヴィッツはナポレオンの行った戦争をもとに研究していますが、このマンガはどちらかというとクラウゼヴィッツの功績を踏まえ、さらに現代につながる戦争の変遷の解説しています。クラウゼヴィッツの視点は第一次世界大戦以前にありますが、この本は第一次世界大戦、第二次世界大戦、9.11などの現代戦争から、これからの戦争に重点を置いて書かれている。その点が書籍の『戦争論』とは違うところです。

勝つための戦争を追求した結果、彼我双方を滅亡させるに至った
『まんがで読破 戦争論』の魅力は、近現代の戦争の歴史を分かりやすく解説している点です。ヨーロッパではナポレオンの登場により、戦争の形態が大きく変わります。それ以前は傭兵(ようへい)という金で雇われた兵士による戦争が主流でした。傭兵は士気も低く、国家のために命をかける強い使命感も持っていませんでした。そういうやる気のない兵士による戦争を変えたのが、フランス・ナポレオンの徴兵制で集めた軍隊です。また、当時フランスは絶対王政に対してさまざまな革命が起こっていましたから、絶対王政を敷く列強はフランス国民政府に強い警戒感を持ち、頻繁にフランス侵攻をしていました。その経験からナポレオンは相手を撃滅しない限り攻め込まれる悪循環は終わらないと悟り、敵を徹底的に撃滅し、再起不能に陥れるまで戦争は終わらないと学ぶことになります。そこでナポレオンは「絶対戦争」という概念を創出させます。つまり、敵を再起不能に至るまで徹底的に撃滅するという戦い方です。この徴兵制と絶対戦争という軍事イノベーションはヨーロッパ全体に大きな影響を与え、第一世界大戦の総力戦という戦い方につながっていきます。

そして第二次世界大戦では原子力爆弾が発明され、実際に使われました。これが絶対戦争の一つの極致です。敵を再起不能になるまで徹底的に撃滅するという戦い方は、この究極の兵器によって幕を閉じました。それ以降、世界は原爆、さらにそれ以上の破壊力を持つ水爆の開発に力を注ぎ、そしてアメリカとロシアという二大大国のにらみ合いによる冷戦が起こります。原爆発明以前の戦争は先制攻撃が功を成す時代でしたが、原爆においては先制攻撃が有利とはなりません。その後の原爆の報復合戦は戦争当事国はもちろん、全世界を滅亡に導き、人類の文明を崩壊させることになります。第三次世界大戦がどのような戦争になるか分からないが、第四次世界大戦で人々は石を投げ合って戦うだろう、とアインシュタインは述べています。強大過ぎる力を持っても、それを使えばお互いだけでなく世界が滅びる。そこから、現代では再びナポレオン以前にもあった「制限戦争」という概念の戦い方になっています。

総括
列強が力を追求し続けた結果、その力を使えない、使ったら最後すべてが終わるという現代の戦争にまで言及しているところが、この本のよさです。クラウゼヴィッツの時代は、まだ勝つために戦争を研究するという姿勢でしたが、現代では戦争がすべてを滅ぼすというところまで来ています。強大な力を持っていながら、その力が強大過ぎるゆえに使えないというのは、新鮮な発想でした。人類は勝つことを追い求める時代をとっくの昔に通り過ぎていた。『まんがで読破 戦争論』はもちろんクラウゼヴィッツの著作にも多く触れています。それ以上に戦争の歴史についての解説が印象的だったのですが、この本はとてもよい1冊だと思います。
 
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