おくのほそ道(全) ★★★☆☆

書評
ビギナーズ・クラシックス『おくのほそ道』。

ビギナーズ・クラシックスの良いところは、漢字に全て振り仮名を振ってあるところだ。
古典は漢字の読み方がネックだが、ビギナーズクラシックスを使えば小学生でも読める。

『おくのほそ道』は松尾芭蕉が東北地方への旅行を思い立ち、その過程を記していく旅行記だ。
江戸から出発して茨木、栃木、福島、宮城、山形、秋田と徐々に東北へ向かい、秋田県を折り返し地点として、山形、新潟、富山、石川、福井、岐阜と巡っていく。各地の名所をめぐり、奥州藤原氏の史跡を訪れ、東北に住む俳人との交流を楽しむ。

芭蕉の俳句の素晴らしさはいうまでもないが、現代語訳を通して読むと彼のめぐった土地の素晴らしさも合せて知ることができ、新鮮な感動があった。

印象に残った場面は幾つかあったが、私がかねてから好きな場面は「しのぶもじ摺りの石」の章だ。
有名なしのぶもじ摺りの石を見るために芭蕉は福島市に訪れたのだが、通行人がこの石のために畑の麦を荒らすので、地元の人が石を山の上から谷底へ突き落としてしまっていた。そのとき石の表面が下向きになって横たわったという話だ。

何とも現実的な話で、風流よりも実生活重視の人々の生き方が浮かび上がっている。

そこで一句。
「早苗とる 手もとや昔 しのぶ摺り」
ここになんとも言えないユーモアがあるような気がする。『おくのほそ道』は、ただ風流を愛でるだけの作品でないところが面白いと思う。

角川のビギナーズクラシックスは音読学習にも最適で1日15分音読するのにはちょうど良い分量になっている。今回現代語訳を通して読むことによって全体像がつかめたので、もう一度音読してみようと思う。

『おくのほそ道』は新潮CDからも素敵なオーディオブックが出版されているので、併せて聞くと学習効果も倍増する。
私は、古典のオーディオブックを聞きながらウォーキングをするのが好きだ。日々の運動の中でこの作品を聞き、家で少しずつ音読して、『おくのほそ道』をたっぷり楽しみたいと思っている。いつか芭蕉のように日本各地の名所を訪れてみたい。そんな思いを胸に秘め、古典の世界を楽しんでいる。

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