戦争論 岩波文庫 ★★★☆☆

書評
孫子の兵法と並び称されるクラウゼヴィッツの戦争論。上、中、下と3巻あり、今回は上巻を読みました。孫子の兵法のように具体的な戦術、戦略について書かれていることを期待したのですが、上巻は戦争の定義、将帥(しょうすい)の条件、将帥の困難、戦史に基づく将帥の天才的戦術のような内容だったと思います。ナポレオンのように戦史に残るめざましい戦いをした将帥を持ち上げているだけのような印象は否めません。そのような内容が延々と続くので、結局読み終わって「これはよかったな。」と思ったのは、最初に読んだ戦争の定義を述べた第一篇だけでした。

戦争の目的は、相手を無抵抗ならしめるか、無抵抗ならしめたと思わせることにある。これはとても衝撃的な発想でした。何事においても決着がつかなければ意味がない。戦争を起こすには、戦争の終わらせ方までしっかりと視野に入れておかなければならない。有利な条件をもって講和により戦争状態を終わらせるか、相手を撃滅して無抵抗ならしめるかしないと、戦争はいつまでも終わりを見ないまま延々と続く。これは本当に深刻な問題です。

孫子には開戦前に彼我双方の状態を道、天、地、賞、法の五事と、君主、将軍、天地、法令、兵隊、兵士、賞罰の七計をもって推し量り、先祖の霊に祈りをささげて、勝てるようだったら開戦し、勝てないようなら思いとどまるということが書かれています。孫子の兵法では勝てるか、勝てないかまでしか書かれていませんが、クラウゼヴィッツの戦争はさらに先に進んで、しっかりと戦争とは何かを定義することによって、戦争の終結までイメージできるようにすることを教えています。戦争を勝負で例えるなら、孫子の教えに則り、勝負に勝てるか、勝てないかをイメージすることはもちろんのこと、勝負にどのように終わりをつけるか、これもきちんとイメージしなければいけません。開戦は誰でもできます。がんばって戦うことも誰でもできます。勝つか、負けるかすれば、そこで終わるわけですが、私たちはがんばって戦った結果、決着がつかないことも想定しなければいけません。事態が総力戦の様相を呈し始め、彼我双方で決着がつかない場合にどうするかまで考えるというのはとても大切でしょう。物事を始める時は、きちんと終わり方まで視野に入れる。それをクラウゼヴィッツの戦争の定義で教わりました。

岩波の戦争論は音読しやすい文体なのですが、漢字や句読点などの表記にかなり問題があります。簡単な言葉も「~の積りで」みたいに「~のつもりで」と表記すべきところを漢字表記したり、「けっきょく」のように漢字で書くべきところを平仮名表記したりしていて、基本的なところで若干の困難があります。さらに「連係」と表記すべきところを「連繋」なんて書いてあるもんですから、「これ、なんて読むの?」というはてなマークが常に頭に浮かびます。私は、読めない漢字はしおりにメモし、電子辞書やパソコンを使って調べ、エクセルで一覧表を作って紙に張っておきました。読めないと恥ずかしい漢字というより、読めてもあまり意味のないような漢字が多いです。現代では使わないというより、使うべきでない漢字が多く、古典文学を読む時のみ役立つかなという感じでした。それでも、戦争論を習得したあと、アメリカ軍の軍事要綱へ挑戦しようと思っている私には、このハードルは何がなんでも乗り越えたいと思っています。孫子とクラウゼヴィッツを習得し、本物の困難に立ち向かうための心得を修めたい。これは私の長年の夢なので、がんばります。
 

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