ニッポンの書評 ★★★☆☆

書評
今や書評というのは誰でも簡単に書けるようになりました。SNS、ブログやホームページで書評を書いている方も多いでしょう。この本は、そんな書評についてプロのライターの視点から考察する本です。私のサイトも「本の題名+感想」というキーワードで検索される方がたまにいます。小説家の方はどうか知りませんが、漫画家さんなんかはマンガの感想をネットで検索される方もいるようです。誰でも簡単に、しかも無自覚に感想を発信でき、それを作者の方も見ているなんてことが起こる時代になりました。あなたの感想、作者の方が見ているかもしれませんよ。そんな世の中だからこそ、プロの視点から見た書評論がおもしろい。以下で私の印象に残った部分をいくつか挙げてみようと思います。

 

これから読もうと思っている読者の方を大切に
書評で一番問題になるのはあらすじ紹介です。ノウハウ本などはある程度あらすじを紹介しても、読者の楽しみを奪うことはないかもしれませんが、小説となるとネタバレは深刻な問題です。私たちネットユーザーがネタバレを意識しないで感想を書くことによって、これから読もうと思っている読者さんの楽しみを奪うことになります。この本を書かれた豊崎さんは、特にこのあらすじ紹介、ネタバレという問題をしつこく論及します。小説のあらすじを紹介する時、どこまでネタバレするのか、クライマックスはあえて書かないで隠しておけるのか。プロのブック・レビュアーがこだわるネタバレ問題。作家が苦心して考えた一番の見せどころを未読の読者のバラしてしまう責任は確かに大きいですね。あらためて考えさせられました。

 

Amazonカスタマーレビューは営業妨害?
豊崎さんはカスタマーレビューやネット上の書評を「営業妨害」と糾弾します。話題になっている本なら1人や2人の感想なんて大した影響を持ちませんが、あまり話題に上っていない作家の本だとたった1人の感想がその作品の営業妨害になることがあります。アマゾンカスタマーレビューの場合、私は評価の数に注目して、たくさんの人が平均的に高い評価をしている商品を選ぶので、1人、2人のクレーマーの意見は気になりません。しかし、これで最初の1人が星一つの評価であとに続く購入者がいないとか、新作が出ていきなり「買ってはいけません」なんて書いてあると怖くて買えなくなりますよね。また、ヒット商品に星一つを付けて「参考になった」という評価を稼いでいるレビュアーがいます。その人の評価はすべての商品において星一つ。もうこうなるとベストレビュアーを目指すだけのゲーム感覚で、商品の使用感なんてまったく関係ありません。星一つ評価なんて、買っても、買わなくても、書けるんですから。豊崎さんはまじめに書評、読後感想、批評を考えていますが、ネットの世界はもうちょっとずれたところで、システムの落とし穴──ボーナスゲームを楽しむだけの用途で推移している感があります。

 

プロは対価をもらって書いている
新聞書評、雑誌書評で書いているライターはお金をもらって原稿を書くプロフェッショナルです。実際の物語を読み間違えていたり、発売されたばかりの人気小説を批判して売り上げを落とすような原稿を書くことはできません。出版業界に籍を置くライターは出版業界に貢献しなければならない。また批判する時にも、その本の話題性に貢献するような的を射た批判をしなければなりません。ここはアマチュア書評家とは大きく違うところです。ある程度読者を獲得しているブロガーになるとブログブランドとか、アフィリエイト収益といったものを意識するようになりはしますが、もともとそういうものを意識しないレベルの人は言いたい放題です。自分の書いた記事に責任を持つという意識は、その記事によるなんらかの対価を得て、初めて自覚できることです。ネットで情報発信をする時には、自分の記事で迷惑を被る人がいないかよく確かめた上で発信する。これはとても大切です。アマチュアは自分の記事で対価をもらう機会もそうそうないですから、せめてプロライターのプロ意識を学んでおくことは無駄にならないでしょう。

 

総括
小中高と読書感想文や書評を習うが、学校の中だけで完結するのと、それをネット配信するというのでは、責任がまったく違ってくるということを教えてくれます。この本は書評というメディアについて書かれていますが、情報発信するという行為、ネットで記事を書くという行為の責任というものを考えるきっかけになりました。教師や知人、友人に見せる文章と、ネットという発信媒体を使って広く伝える文章とは意味合いが大いに異なり、そこにある責任が違うということを意識して、人に読ませるという行為をもう一度考えてみる必要がありそうです。
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